本研究は、実物経済から金融経済への移行を背景に、先物・オプション・スワップ等の新金融取引を対象として、その認識・測定・開示に関する会計問題の総合的解明と珪論展開を図ろうとするものである。本研究の結果得られた主な知見は、およそ次のとおりである。 (1)新金融取引の認識について、新金融取引の多くは未履行契約をなし、会計上の取引とは考えられないというのが従来の会計基準の立均であった。しかしながら、これらの取引は一定の条件のもとで理論的には貸借対照表能力をもつ。 (2)新金融取引と時価評価会計について、取引市均の是備・拡充化に伴い、長期的には、「意思決定有用性-時価評価会計」が可能になり、かつ、ますます望ましいものになるかもしれない。 (3)新金融取引とヘッジ会計について、「経済的実質主義-意思決定有用性」を強調する立場から、このようなヘッジングの取引事態を一層的確に財務諸表上で反映するヘッジ会計の確立が図られなければならない。企業のヘッジ取引の構造が未だ十分に解明されていない現在、弾力的かつ包括的ヘッジ・モデルとの併用が検討されるべきである。 (4)新金融取引と情報開示について、新金融取引に係る開示の中で利害関係者に最も関心ある情報は損失リスクに関する情報である。この均合、リスクそれ自体に係る情報とともに、リスク・コントロールに関する情報が等しく重要になる。 以上の研究結果を踏まえ、新金融取引に関する会計基準の制度化にあたっては、漸進的かつプラグマチックな制度変革によって推進すべきことが主張される。
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