研究課題
粘性が無限大の液体中における1次元弾性体の運動をモデルとした偏微分方程式を数学的に解明することが本研究の目的であった。前年度の研究により、ユークリッド空間においては方程式の解が実際に存在し、しかも弾性曲線(定常解)に収束することが判明していた。本年度の研究において、その結果を一般のリーマン多様体に拡張することができた。物理的には、束縛条件下における運動の解析ができたことになる。得られた結果は次のとおりである。定理:実解析的コンパクトリーマン多様体において、上記方程式の解は無限時間存在し、しかも弾性曲線に収束する。実解析的でなくとも、弾性曲線に収束する部分列は存在する。このことは、閉弾性曲線の存在をも主張している。そのこと自体は既に知られていたことであるが、任意の閉曲線から出発して、弾性エネルギーが減少するように自然に変形することによって閉弾性曲線が得られるということが保証されたという点で意義がある。なお、証明における重要な節点は解の短時間存在と長時間存在であった。短時間存在については完全に一般的かつ解析的に示すことができた。従って、類似の方程式を研究するときの大きな手がかりを得たことになる。長時間存在の証明では測地線からの分離が中心課題であったが、そこで用いた方法も今後の研究に一般化が期待できる。