研究課題/領域番号 |
05640224
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大矢 雅則 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90112896)
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研究分担者 |
須鎗 弘樹 東京理科大学, 理工学部, 助手 (70246685)
渡〓 昇 東京理科大学, 理工学部, 講師 (70191781)
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キーワード | 情報力学 / 情報理論 / 量子情報理論 / 最適値問題 / 遺伝情報学 / 光通信 / ニューラルネット / 量子フラクタル次元 |
研究概要 |
この一年間に亘る研究成果について述べる。情報理論は可換系及び非可換系の確率論を一つの基礎として構築されており、近年はその周辺領域の研究がとみに盛んである。とくに量子情報理論、最適値問題、遺伝情報学等の研究が、情報を核とした共通の土俵の上で進められている。例えば、量子情報理論から得られた結果は通信理論などの情報科学のみならず生命現象や物理現象などへも適用可能であることが最近分かってきた。本研究では、2つの複雑性を包含した力学系である情報力学という観点から様々な分野の問題を統合的に捕らえ、具体的には、以下のような内容の研究を行ってきている。(1)時間の方向性を示す非可逆変化の解明を新たな視点から捕らえる研究を開始した。(2)(1)と同様な方法と相転移の考えを錯視現象の解析などに適用し、認知科学の数理的取り扱いを研究している。(3)光通信過程に対して、情報力学をベースにして誤り確率を厳密に計算する公式を導出し、この研究を用いて、今新しい光量子状態として注目されているスクイズド状態を送った場合の誤り確率を求め、スクイズド光を用いた通信がコヒーレント光を用いた通信よりどれほど有用であるかを厳密に調べる研究を行った。(4)遺伝子配列のアライメントは遺伝子配列の比較の第一歩として不可欠なものであるが、情報力学の研究を通して、情報理論と統計物理学の手法をアニーリングやニューラルネットの手法との関連を調べ、それらを用いることによって、現存するアライメント法の改良を行った。とくに現在熱望されているマルチプルアライメントへの応用を研究している。(5)epsilon-エントロピーの定式化を情報力学に取り入れ、はるかに一般な系に対するepsilon-エントロピーを定め、それをもとにして状態の複雑さを解析するための新たな指標となるフラクタル次元を導入した。(6)以上の研究を統合する情報力学の数理構造をより精密にする基礎研究を推進している。
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