研究課題/領域番号 |
05640262
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辻下 徹 北海道大学, 理学部, 教授 (10107063)
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研究分担者 |
本多 尚文 北海道大学, 理学部, 助手 (00238817)
井上 昭彦 北海道大学, 理学部, 講師 (50168431)
三波 篤郎 北海道大学, 理学部, 講師 (30154157)
岡部 靖憲 北海道大学, 理学部, 教授 (30028211)
津田 一郎 北海道大学, 理学部, 教授 (10207384)
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キーワード | 複雑系 / コーヒーレンス / 創発的挙動 / エントロピー / 相互情報量 / 時系列 / 神経系 / 情報の流れ |
研究概要 |
当研究課題に基づく本年度の研究において、情報の流れ・相関・同期化・コーヒーレンス等、神経系のいわゆる創発的挙動にかかわる概念を数学的に明確にすることに取り組んだ。これらは豊かで多様な意味を持っており、われわれの分析はその一面を捉え得たに過ぎないが、この分析を通して、コーヒーレンスの諸相を詳細に表現出来るようになる一方、創発的概念の多くが神経系を孤立系とみては意味を失うことが明瞭になった。 分析に用いた数学的概念は、加算無限個の有限値確率変数の組の持つ種々の情報理論的指標(エントロピーとそれから派生する種々の相互情報量)である。連続な時間や観測量を考慮することは、技術的煩雑さを別にすれば本質的な数学的困難があるとは思われないが、概念の分析という我々の目的には不要である。 われわれの枠組は、神経系の挙動全体の空間上の確率分布を土台とする。しかし、実験から得られる時系列は一般に複数の確率分布を決め、しかもその中に標準的と呼べるものはなく、各分布は各々神経系の挙動の一側面を表現している。このことが意味するところは、神経系の統合性・コーヒーレンスなどの概念が神経系の構造的のみに関するものではなく神経系内部に見られる現象のどの様相に注目するかという主観的因子にも強く依存した概念だ、ということである。 われわれの数学的枠組は簡単なものではあるが、それに基づく神経系の時空的挙動に関連する概念の分析は、神経系のみならず、いわゆる複雑な力学系を記述する際に用いられる諸概念が詳細な吟味を必要としていることを強く示唆している。
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