1980年ごろから破壊力学の数理モデルに関する研究を行い。亀裂をもつ弾性体を記述する偏微分境界値問題の解の特異性が破壊現象を起こす力であることを証明した。この証明で用いた一般J積分の概念がHadamardの変分公式と関連をもつことから、一般J積分の概念を破壊力学以外にも適用できるように拡張した理論を1985年に雑誌Japan J.Appl.Math.に掲載した。後の研究で、この一般J積分の理論的拡張は、工学での感度解析と密接に関係することが分かった。その考察については京大数理解析研究所・講究録744(1991年刊)に掲載した。破壊問題など極度に応力が集中するため、古典的力学が使えない現象においても感度解析が可能となり、感度解析の研究範囲を広げる。現在、これらの考察を整理し、論文とする準備をしている。 平成5年度の成果としては、Dual Singular Solution Methodを用いて応力集中を表すパラメータを表現することにより、そのパラメータの領域摂動による感度解析をおこなう表現式を得たことである。この表現式は有限要素法により計算可能である。この結果については、平成6年3月に京大数理解析研究所で開かれた「工学に現れる偏微分方程式の数値解析とその応用III」において発表した。今後の計画としては、Dual Singular Solution Methodの適用範囲を広げられるような方法論を確立するとともに、応力集中を表現するパラメータの感度解析を数値計算する予定でいる。
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