回転する磁気圏においては、中心天体の自転のエネルギーが電磁場を介してプラズマ流(星風)として放出される。特に強磁場を持って高速に回転する中性子星(パルサー)では相対論的エネルギーまで効率よく加速されていることが観測されている。また、回転するブラックホールも同様の電磁的プロセスで回転エネルギーを放出していると考えられている。そのように相対論的なプラズマ流が加速される機構と磁気圏の構造を明らかにする。磁場構造を決める方程式(いわゆるGS方程式)を解いて、構造やプラズマの加速率を求めることになる。 磁場構造を決めるGS方程式は大変難しく、一般には解くことは大変困難と考えられている。しかし、もっともらしい簡単化をいくつか行うことで近似的な簡単化した方程式を導いた。更にコンピュータによる数値計算を行って、その簡単化された方程式を解き、軸対称の回転する磁気圏の構造を求めた(近日論文投稿)。解を求める上で重要な点は、磁気圏の中で理想電磁流体の近似(たいていの天体プラズマでなりたっていると信じられている)が成り立っていないことが見いだされたということである(この仮定を入れると解が存在しないことが示された)。結果として初めて磁気圏全体の磁場構造が解かれた! 最近スペースシャトルから打ち上げられたγ線天文台でパルサーからの強いγ線が観測された。パルサーでは相対論的電磁流体風が吹いていることが知られているので、この風の中で、この研究で見いだされた理想電磁流体近似の崩壊が起きているとするならば、このγ線の新しい解釈を与えることが出来る。
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