磁場を持った高速に回転する天体から出る相対論的なプラズマの流れについてどれほどの加速効率が得られるのかを明らかにしようというのがこの研究課題の主な目的である。ここで言う加速効率というのは、プラズマの流れの根本(そこでまだプラズマは加速されていない)において電磁的なエネルギーとして存在するエネルギー流束(Poyntingflux)のうちのどれだけがプラズマの運動エネルギーに変換されるかを意味している。この加速効率の鍵を担っていると思われる磁場の構造を決める方程式(Grad-Shafranov Equation)を近似的に解くことを初年度で行なった。中心のダイポール磁場から磁場は徐々に変形され遠方ではほぼradialになる磁場の全体構造が求められた。 当該年度では、この磁場構造の下で磁力線に沿った流れの方程式を解いて加速の効率を求めた。解はプラズマの注入領域(プラズマ風の根本)から出発してAlfven点、Fast-特異点を通過して、超磁気音速流になるように選ばれた。もし磁場構造が放射状で冷たいプラズマであれば、Fast-特異点は無限遠方に存在し、ほとんど加速効率が得られないことが知られていた。しかし、この研究で求めたより現実的な磁場構造を適用するとFast-特異点はAlfven点の近くに現われ、高い高速効率が得られることを示すことが出来た。 カニパルサーでは相対論的プラズマ加速(パルサー風)が高い加速効率で生じていることが観測的に知られているが、我々の理論はこれを理解するための重要なステップを与えたことになる。
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