研究の目的 本研究は、"217.5±2.5nmのこぶ"を示す急冷炭素質物質(QCC)の構造解析を目的としている。本年度はそのため、1.QCCの元素分析のための基本条件の確定、2.プラズマから直接急冷した未変成QCCの核磁気共鳴(NMR)分析、3.熱変成QCCの類似物質である、炭化水素燃焼炎から生じる炭素微粒子を多量に製造する装置の製作、4.ワークステーションを用いたデータ処理システムの設定を行った。 得られた結果 1.QCCの元素分析のために、理化学研究所にあるPerkin Elmer 240 CHN Analyzerを用いて、微少量の試料でCHOの元素分析ができるよう、基本条件を設定した。元素分析には、1.5mgの試料を白金薄板でつくったボートに入れる。 2.未変成QCCをメタノールに溶解し、NMR測定を行った。大部分がメタノールに溶ける。溶解直後ただちに測定を行い、それ以後測定を続けNMRスペクトルの変化を追跡した。溶解直後に見られたピークは、数分後には消滅し、安定したスペクトルが得られない。メタノールに溶解したQCCは、非常に反応性に富み、正確な分析には新たな工夫(溶媒の種類、温度などの検討)が必要であることがわかった。 3.QCCの類似物質として、高温燃焼ガスからの急冷固体であるいわゆる"煤"を多量に製造する工夫を行った。原料として、メタンをはじめ炭素数が8までの直鎖飽和炭化水素を不完全燃焼させ、燃焼炎上部に冷却した石英ガラス製の器をかぶせることにより、その器の内壁に多量に"煤"を析出させることができた。これを対照試料として、熱変成QCCの構造解析を進める。 4.熱変成QCCの減光スペクトルと、観測された星間減光曲線の比較を行うため、スペクトル解析が高速でできるワークステーション(東芝AS4050EGXシステム、103万円)を購入し、稼動させた。 当初計画のESCA、Augerを用いた表面分析は装置の整備の遅れなどから、次年度以後に行うこととした
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