われわれの銀河の星間塵のスペクトルは、星間減光曲線として知られている。いわゆる“217.5±2.5nmのこぶ"を示し、それに加え〜500nmを中心にブロードなhumpを示す。 筆者らは、“217.5±2.5nmのこぶ"を示す炭素質物質として、メタンプラズマガスを真空中に放出し急冷した時にできる物質群(QCCs)の中から、2種の物質を提示した。さらに、メタンガスの燃焼炎から生成する“煤"が、〜217.5nmに吸収ピークを示すことを明らかにした(1992年度秋季天文学会で報告)。 今回、これに加えて、石炭から得られるピッチを水素雰囲気下(150気圧)450℃で、加熱変成して得られたメソフェーズピッチが、〜217.5nmにピークを示すことを見いだした。メソフェーズピッチは、旭コ-クス株式会社により提供されたものである。以上3種の〜217.5nmを示す炭素質物質は、共通して、水素に富む雰囲気下で作られる炭素質物質である。合成されたメソフェーズピッチの化学組成は、H/C=0.52と分析されており、水素に富んだ炭素質物質である。 QCCおよび“煤"の化学分析をめざしたが、合成される量が少なく、化学分析には至らなかった。しかしながら、〜217.5nmを示す第3の炭素質物質であるメソフェーズピッチを見いだし、その化学組成から、これらの炭素質物質は水素含有量が比較的大きいと思われ、〜217.5nmのこぶが原因として炭素質物質に含まれる水素が重要な役割をもつことが推測できた。
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