分子雲の多くはフィラメント状に細長く、その内部にさらに密度の高いクランプやコアを抱えている。そして若い星の多くはコアから生まれる。この分子雲-クランプ-コア-星という階層構造は、分子雲が重力収縮が重力収縮しながら分裂することによって形成されると考えられる。本研究では階層構造の形成過程を理論的に明らかにするために、細長いフィラメント状の分子雲の形成とその自己重力不安定性による分裂・収縮を数値シミュレーションにより調べた。以下に得られた主な成果をまとめる。 (1)フィラメント状の分子雲は自己重力不安定性のために、その直径の数倍の間隔で分裂する。 (2)磁場や回転がない場合、分裂によってできた高密度ガス雲は単一の球対称なコアとなり、より小さな階層の天体は形成されない。 (3)軸に平行な磁場がある場合、分裂によってできた高密度ガス雲は薄い円盤状になる。この円盤状のガス雲は厚み方向に静水圧平衡を保ちながら、その半径を縮めていく。 (4)円盤状ガス雲の収縮過程をよく近似する自己相似解を見いだし、その安定性を議論した。予備的な解析によれば、円盤状ガス雲は方位角方向の分裂に対して不安定で、より小さな質量の天体(階層構造)の形成が予想される。 (5)フィラメント状の分子雲が軸を中心に回転している場合、回転する薄いガス円盤が分裂によって形成される。この円盤の進化を軸対称を仮定した2次元数値シミュレーションで追跡し、円盤のrunway collapseする中心核、自己重力不安定性によって形成される円環、それらをつつむ外周に分かれること(階層構造の形成)を見いだした。 (6)磁場と回転は重力収縮過程での階層構造の形成にとって重要な役割を果たす。
|