系外銀河水メーザー源の高速成分についての研究を行なうに当たって、本年度は、観測面では、系外銀河水メーザー源の高速成分の直線偏光度を測定した。理論面では、高速パーソナルコンピューター及び数式処理プログラムの導入を行ない、数式演算を開始した。出口、中井、及びBarvainis(研究協力者)は、平成5年7月及び10月にアメリカのヘイスタック天文台の37m電波望遠鏡を使用し、NGC4258銀河の水メーザー高速成分の直線偏光を測定する実験を行なった。その結果、強い成分について、直線偏光度は12%以下弱いものについて30%以下という、極めて良好な直線偏光度の上限を得た。この結果は、メーザーを作り出す媒質内で、直線偏光成分の偏光方向を回転させるメカニズムが働いていると考えられ、これをプラズマ中での磁場と電子の相互作用によるファラデー回転によるものであると考えられる。このことから、プラズマ中の電子密度と磁場の強度に関する上限を導くことができた。理論面では、ラマン散乱モデルによるメーザー強度についての下限値を導くことができたこと、またランダウダンピングの効果が本質的であり、これがメーザー輝線の線幅に大きく関係していることがわかり、プラズマの電子密度に制限を加えられることがわかった。直線偏光の観測により得られたファラデー回転による磁場及び電子密度の制限条件とあわせることにより、プラズマの物理的状態を明確にすることができた。これらの結果の一部は、論文として学術雑誌に出版された。
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