平面に束縛された粒子には固有の統計的性質が存在しない。この事から、平面上でフェルミオンはボソンに転化でき、又、分数統計を持つ粒子も存在し得る。この事に起因する低次元物理に特有の不可思議な諸現象を、チャーン・サイモン・ゲージ場の位相的構造との関連で解析し、更に進んで、その研究成果を実験的に検証する方法を探求している。具体的に、「2層量子ホール系には素電荷の凝縮に伴うジョセフソン効果が存在する」という我々は予言を行っている。この予言が検証されれば「平面系では統計が意味を失う」という物理原理の初めての検証になり学術的意義は極めて大きい。 平成5年度に新たに得られた理論的成果は次の様である。 1.二層ホール系でのジョセフソン効果が電磁的対称性の自発的破れに起因する、という事を指摘し、詳しい理論的解析を行った。 2.上記の自発的破れに伴うゴールドストーン・モードを、最低ランダウ準位への射影をとりいれ、量子論的に解析した。 3.二層ホール系にはプラズマ振動が低エネルギー励起モードとして存在する事を示した。この励起によって、最近ベル研究所で観測した「活性化エネルギーの横磁場依存性に存在する異常な振舞い」が大変良く説明される事を示した。この事は、二層ホール系に於けるジョセフソン現象の測定が比較的容易である事を示唆している。更に、マイクロ・ウェイブを用いたプラズモン振動の測定の為の実験を提唱した。
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