1.K中間子Bパラメータは、素粒子の弱い相互作用に於けるCP非保存の解明の上で重要な量である。これに関し昨年度開始した、格子量子色力学の数値シミュレーションによる研究を完成した。特に、従来から問題視されてきた、ゲージ不変でない演算子とゲージ不変な演算子が同一の結果を与えるかどうかの検討を行い、繰り込み定数に対する摂動の1ループ補正を考慮に入れれば、両者が統計誤差の範囲で完全に一致することを示した。また、動的クォークを取り入れた計算を実行し、Bパラメータへの影響は5%程度と小さいことを示した。 2.K中間子のππ崩壊に於けるΔΙ=1/2則は未だに解決のつかない問題である。この崩壊過程の振幅には、終状態のππ散乱が重要な役割を果たすと考えられている。一般に散乱等、ハドロンの4点以上のグリーン関数の計算を要する量を数値シミュレーションにより求めるには多大の困難があった。これに関し、ウオールソース法の改良を行い、これらの量を計算する一般性の高い方法を開発した。その応用として、ππ、πN、NN散乱の散乱長を求め、特にππのアイソスピン0のチャネル、NNのアイソスピン1/2のチャネルの散乱長を始めて計算した。 3.U(1)問題として長年の懸案であるη'粒子の質量計算にも上記2.の方法が応用できることに着目し、クェンチ近似による計算を行った。その結果、実験値と整合する結果を得、U(1)問題解決への足掛かりをつかんだ。
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