研究概要 |
準弾性散乱領域のスピン・アイソスピン・モードの励起について、次のような解析を行った。 a)スピン・アイソスピン・モードに対する原子核の応答関数が、核相関のない単純な殻模型で計算した場合、核相関をTamm-Dancoff近似で取り入れた場合、RPAの近似であるRing近似で取り入れた場合、△粒子励起の効果を取り入れた場合に、それぞれどの様な影響を受けるかを分析した。さらに、和則を用いてRing近似以上の相関を取り入れた場合とも比較した。一般にRing近似以上の相関が重要であること、縦スピン応答関数のenhancementには△粒子の影響が顕著であることなどが明らかになった。また、この結果が核子、空孔有効相互作用、核子、空孔-△・空孔遷移有効相互作用にどの様に依存するも調べた。その際、よく用いられるLandau-Migdal parameterに対するg′_<NN>=g′_<N△>=g′_<△△>という「universalityの仮定」は用いず解析した。 b)(p,n)反応のような核子反応の解析に、これまで歪曲波インパルス近似(DWIA)計算を、universalityの仮定の下での直交条件つき連続RPA法と併せて行ってきたが、今年度はuniversalityの仮定を用いずに計算できるようにプログラムを改良した。 c)これらの発展を踏まえて、^<12>C,^<40>Ca(p^^→,n^^→),(e,e′)の解析を行った。(e,e′)散乱よ評価されるアイソベクトル・スピン横応答函数は、交換電流やRPA以上の相関が入っていないことを考慮すると、ある程度理論的に再現されたといえるが、(p^^→,n^^→)反応の解析で得られるものは、実験値が理論値より2倍も大きいという困難に直面した。一方、アイソベクトル・スピン縦応答関数は(p^^→,n^^→)反応のみから抽出されるが、大きさはある程度再現できた。(p^^→,n^^→)反応で得られるスピン横応答函数が異常に大きい理由を明らかにすることが今後の大きな課題である。
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