研究概要 |
大きな運動量移行での準弾性過程(e,e′p)および(p,2p)反応における陽子の始,および終状態相互作用の強さは核の透明度(nuclear transparency)とよばれる量がその目安となるが,今年度は核子の内部構造を考えないグラウバ-近似の計算を精密化すると同時に内部構造に対する模型を設定して,その影響を調べる計算を行った。その結果,運動量移行が大きい極限で,簡単な描像とは異なる興味ある性質をもつこと,また核の透明度の質量数依存性に特徴的な様相が現れることなどがわかった。(e,e′p)反応に関しては,最近アメリカ,スタンフォード大学の電子線型加速器施設(SLAC)での実験結果が報告され,測定された運動量移行の範囲では内部構造の影響が見えていないがより大きな運動量移行での実験が持たれる. 一方,核子の内部構造を記述する相対論的クォーク模型としての南部-ジョナラジニオ(NJL)模型でのFaddeev方程式による計算では,核子や△アイソバ-の質量だけでなく,軸性ベクトル結合定数(gA)スピンの期待値,中性子,陽子質量差の計算を行い,興味ある結果を得ている.
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