平成5年度は、まずニュートリノの世代数を1として、シーソー機構をもちいてニュートリノに質量を持たせ、ウィークボソンW^+ W^- Z^0に関する3点関数の1ループ輻射補正を実行した。2点関数の補正と組み合わせて*電荷を用いた「くりこみ」を実行し、LEPIIで重要な電子陽電子散乱過程-e^++e^- →W^++W^- -の散乱断面積を評価した。このとき最近開発されたファインマンパラメーターに関する数値積分法を用いた。その結果、偏極した電子、陽電子ビームを用い、且つ終状態のW^+とW^-の偏極が測定できれば、そのデータからニュートリノの質量はもとより、マヨラナ粒子かディラック粒子かの相違まで判定できることがわかった。これは新しい結果である。分析のポイントはマヨナラ粒子とディラック粒子とで、散乱振幅や、とりわけWボソンの形状因子に大きな相違が存在することを示すことが出来た事にある。数種類あるどの形状因子にどのような相違が現われるかを考察した。このウィークボソンの形状因子を更に詳しく測定することは電子一陽電子衝突実験のみならず、陽子-陽子衝突実験や、最近話題のレーザービームを用いた電子一光子散乱実験にとっての大切なテーマになることは言うまでもないし、またCPの破れをも観測できるかも知れない。これらは平成6年度以降において研究する予定である。更にマヨラナニュートリノ模型を用いた宇宙のバリオン数生成問題に対しても、一次相転移のダイナミックスの詳しい分析を用いて一定の成果があった。来年度以降より詳しい分析が期待される。
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