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今年度の研究において得られた主たる成果の概略は、以下の通りである。
1.超弦理論において期待される超対称性の軟らかい破れの持つ一般的な性質の解明と、そこで現れる破れの非普遍性の引き起こす様々な現象論的効果について考察を行った。まず、ゲージ結合常数の統一が起こるエネルギースケールについて調べ、超対称性の破れにある種の非普遍性が存在する場合には通常よりも大きなスケールで結合定数の統一が起こることを示した。次に、ゲージ結合定数の統一スケールについてこの様な現象を引き起こし得る超対称性の軟らかい破れが実際に超弦理論において導かれ得ることを具体的に超弦理論において示した。さらに、軟らかい超対称性の破れと中性子の電気双極子能率の関係について、特にCP対称性を破る位相との関連に着目し検討を行い、CP対称性を破る位相について従来許されないと考えられていた大きな位相が実験的に知られた中性子の電気双極子能率の上限値に矛盾しないことも有り得ることを指摘した。
超弦理論において、太陽ニュートリノ問題を説明できる程度の小さなニュートリノ質量の実現は残された大きな現象論的課題のひとつである。この問題を超弦理論の有効理論として得られる余分なU(1)対称性とゲージシングレット粒子を含む模型において考察し、小さなニュートリノ質量の実現可能性を指摘した。同時にこの模型において、輻射補正によるゲージ対称性の破れの繰り込み群に基づく数値計算による検討、およびトップクォークと余分なU(1)ゲージ場の質量の評価を行った。
以上の課題は当初の研究目的の重要な部分である。上記の項目に関する研究成果の一部をすでに口頭発表、研究論文で公表した。現在新たな成果を論文として準備しつつある。
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