本年度は、(2+1)次元時空における正準観測量の構造を一般的な時間スライスのもとで調べるために、コンパクトな2次元曲面の計量を局所一様計量からの共形変換として表し、運動量拘束条件を解くことにより局所一様構造を記述するモジュライパラメーターと共形変換を表すスカラ関数から正準共役量を構成することを試みた。また、これと並行して、4次元量子重力における微分位相不変量を構成することを目的として、コンパクト3次元空間における一様計量と一般の計量の距離を定義し、その極値として計量の微分位相同値類の代表元を取り出す可能性を検討した。結果として、次のような知見が得られた。 1.(2+1)時空の正準理論に関しては、正準運動量は曲面上の調和形式と一様計量のモジュライパラメーターに関する微分の1次結合で表される。また、一般的なスライスのもとでは、ハミルトニアン拘束条件はスカラ自由度に対応する正準変数の非局所的な関数となる。 2.コンパクト3次元空間の微分位相不変量の問題に関しては、計量そのもの、ないし3脚場から自然に定義される計量間の距離の極値は、微分同相クラスの代表元を一意的に定めない。 このように、これまでの研究はどちらかというと問題の難しさを明らかにする結果となった。現在、これらの困難を回避する方法を模索中である。 以上の研究課題に直接関連した問題以外に、ドメインウォールからの重力波放出の問題をゲージ不変な一般相対論的摂動論を用いて研究し、球対称で平坦な時空をバックグラウンドとするドメインウォールは1次の摂動では自発的に重力波を出さないという興味深い結果を得た。この論文はPhysical Review誌に投稿中である。
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