研究概要 |
(1)真空の相転移における場の量子状態の定式化 真空の相転移を調べるためには,まずそれによる場の量子状態の変化を記述する枠組みが必要である。本年度は前年度に平坦な背景時空において行なったWKB波動関数を使った定式化に基づき,相転移後の真空の泡の内部の量子状態を各フーリエモードごとに求める手法を開発した。一方初期宇宙での重力の影響を採り入れるため,WKB波動関数による定式化を曲がった背景時空に拡張した。この場合,偽の真空はド・ジッター時空にあるので,そのド・ジッター不変な真空状態を相転移後の泡のO(3,1)対称性を考慮した双曲空間上のモード関数で表わす必要がある。この問題はいくつかの研究グループによって検討されていたが,今回我々が初めてそれに成功した。 (2)偽の真空の崩壊後の場の量子状態の解析 (1)の定式化に基づき,偽の真空の崩壊時に現れるO(4)対称な真空の泡の内部の量子状態を,泡の薄壁近似の下で具体的に評価した。その結果,泡内部の時刻一定双曲面の曲率スケール以上の長波長モードで有限の粒子生成が起こり,それ以下の短波長モードは波数の指数関数的に粒子生成が抑制されることが分かった。
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