平成6年度の研究は二つに大別され、以下に各々に付いて報告する。 (1)フラグメントと核子のflowの研究。初年度(平成5年度)は分析する系が^<12>C+^<12>Cという軽い質量数の系であったが、核物質の状態方程式(EOS)の議論のためには、より重い質量数の系へと分析範囲を広げねばならない。今年度は^<40>Ar+^<27>Alの系の分析を完成させた。有効核力として軟らかい核力のGogny力と硬い核力のSKG2力を用い、実験の再現は前者では良いが、後者では悪いことが分かった。この結論は媒質内の二核子衝突断面積を変えても変わらないことを確かめた。大きいクラスターほどflowが大きいという実験結果も再現した。^<12>C+^<12>Cに比べて^<40>Ar+^<27>Alの方がクラスターの動的な形成にcoalescenceの機構が大きく寄与していることが分かった。 (2)AMD理論にΔ粒子の自由度を取り入れること。核子当たり数百MeVの高エネルギー反応を扱う為に、Δ粒子の自由度を取り入れたAMD計算の拡張プログラムコードを作った。この拡張プログラムのテストの意味も含め、Δ粒子生成の反応過程がはっきりと現れる陽子入射の非弾性散乱過程を核子当たり800MeVで研究した。計算はΔ粒子生成の反応過程と準弾性散乱過程を同時に良く再現した。陽子入射の非弾性散乱過程については核子当たり200MeV以下でも研究し、実験データの良い再現を得、前平衡反応過程について多くの新しい知見を得た。Δ粒子の自由度を取り入れたAMD計算の拡張プログラムコードを用いた重イオン反応の研究を今後は開始する予定である。
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