研究概要 |
平成5年度の研究計画としては,大きな項目としてi)ひもの理論の非摂動効果とii)量子可解系のスペクトル生成代数に関する理論的構造及び相関関数を挙げてある。i)に関しては行列模型の量子力学で記述されるc=1,d=2の非臨界次元のひもの理論を考察した。系の状態密度に関して超幾何級数の逆関数を用いて与えられる厳密な表式を得ることができた。ひもの非摂動効果はいかにして理解し得るものか,及び従来の摂動級数であるところの発散している漸近級数とどの様な関係にあるのかがこの仕事により明らかになった。この結果は既にS.Chaudhuri,T.Ooshitaとの共著としてNucl.Phys.B409(1993)397に発表されている。過去1〜2ケ月でこの結果はc=1で多重臨界点を持つ行列模型においても導出された。M.Koikeとの共著論文を準備中である。我々がこれまで行なった計算はある特定の模型に対するものであるが、次の大きな段階としては非臨界次元上の様々なc=1模型達の非摂動論的なuniversality classがいかなる形で理解,分類されるかが挙げられるであろう。我々の行なったことはこの大きな課題への第一歩である。 ii)に関しては以前から行なっていた熱力学Bethe仮設に基づくSine-Gordon系のuniversality classの決定に関する計算を継続した。結合定数B^2/8π=2/2n+3のところで,許される非整数chargeの値を決定し質量ゼロ極限でZ_2 graded chiral algebraの存在を示したことがこの計算とともに得られた成果である。Bogomornyi boundと呼ばれるsolitonの質量に関する不等式のsaturationがUg=i(slra))の表現論としてどう理解されるかも明らかになった。T.Ootaとの共著としてこれらはProg.Theor.Phys.Supplement 114(1993)41,及びNucl,Phys,B(1994)to appearに発表されている。これらの結果は現在進行中の角転送行列(あるいはboost operator)の固有状態から相関関数を求める試みに対するkinematicalな母体を与えている。 その他に筆者はPhys.Lett.B299(1993)64で,以前提唱したsupersymmetryを持つ離散化された模型においてsuper Virasoro constraintsのdouble scaling極限及びそれに付随するsuper KP hierarchyの構造を得ている。尚発表論文のうちの最後の2つは1993年6月Ukraineで行なった講演および1994年1月Indiaで行なった講演にそれぞれ基づいている。
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