研究概要 |
天体の中で、核融合反応によって水素に始まって次々と重い元素が合成される過程は、宇宙の元素の存在比や星の進化を考える上で極めて重要である。しかし、関与する原子核の運動エネルギーが熱エネルギー程度と大変に低いので、これらの核融合反応を実験室で直接に測定するのは容易ではない。一連の融合反応のうち、それより重い元素の存在量を左右すると言う意味で重要なのが、ヘリウム(質量数4)から出発する反応である。質量数5および8には安定な原子核が存在しないという事実から、これまで広く受け入れられてきたのが、ヘリウム原子核^4Heが多量に存在する高密度状態において、短寿命の^8Beがまず生成され、それが崩壊する前に^4Heが捕獲されて^<12>Cが作られるという筋書きである。(^4He+^4He→^8Be,^8Be+^4He→^<12>C^*(O^+_2,7.654MeV)→^<12>C+γ(e+e-))この反応を直接測定するのは、きわめて難しい。ところが、この筋書き以外に、3つの^4He核が一度に融合して^<12>C^*が生成される道筋も有り得る。化学ポテンシャルを用いた、エネルギー差だけに基づいた簡単な見積では、高温・高密度状態にある^4Heからは、後者の筋道に従った方が10倍程度多くの^<12>C^*を生み出すことがわかる。実際には^<12>C^*(O^+_2,7.654MeV)状態がどれだけ3つの^4He核からなる状態を含んでいるかによって、後者の反応が重要かどうかが決まる。本研究では、この^<12>C^*状態の核構造をさぐるため、崩壊過程崩^<12>C^*(O^+_2,7.654MeV)→^4He+^4He+^4Heが、競合する過程^<12>C^*(O^+_2,7.654MeV)→^8Be(O^+,g.s.)+^4Heとどのくらいの分岐比で起こるかを測定する。 これまでに、3つの^4He核を同時に測定出来るような、きわめて効率の高い検出器系(個々の粒子の位置とエネルギーが高精度測定できるもの)の設計を、モンテカルロ・シミュレーションに基づいて行った。さらにその中心に位置する半導体位置検出器(16strip PSD,50mm×50mm)の性能テストを行った。
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