研究概要 |
B中間子やΛ_b,Σ_bなどのBハドロンを構成するbクオークについて,(1)c,bの重いクオークのあいだに成り立つとして提唱されているフレーバー・スピン対称性がどの程度よい対称性で,その破れを表す重いクオークの質量による逆べき展開の補正項がどのような効果を及ぼすか(2)bクオークからcクオークへの崩壊をつかさどる荷電流のカイラリテイがはたして標準模型の通りなのか,それとも違っているのか未だ実験的に検証されていない問題(3)クオーク・レプトン3世代標準模型によればその存在が予想されるCP非対称性がB中間子にも現われるのかどうか等を明らかにする課題について取り組み,本年度は以下に述べるような研究成果を得た。 1.重クオーク有効理論(HQET)をB中間子がハドロンに崩壊する反応に適用しこの反応でフレーバー・スピン対称性が成り立つかどうか,また,一般的に仮定される遷移行列要素のあいだの「因子分解仮説」が成立するかどうかを調べた。結果は重クオーク有効理論および因子分解仮説がbクオーク崩壊にもとづくB中間子崩壊過程にはきわめて有効であることが明かとなった。計算にはチャームクオークの質量の逆べき展開での1次の補正項まで取入れ,B中間子のセミレプトニック崩壊を再現するように定めたパラメータを用いた。 2.偏極したbバリオンであるΛ_bがセミレプトニック崩壊する反応Λ_b→Λ_c1νにおいて,(cb)荷電流が標準模型のように左巻き(V-A)である場合と,純粋に右巻き(V+A)である場合のそれぞれについてパリテイ非保存にもとづく物理量を計算した。この結果,右巻きの荷電流が存在するかどうかが実験によって容易に確かめられることを示した。計算には重クオーク有効理論(HQET)を用いた。
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