研究概要 |
GEOTAIL衛星に搭載した粒子線望遠鏡MI-1/2及びHIを用いて、1AUの惑星間空間における粒子環境の測定を実施した。1992年9月から1994年8月までの2年間において、惑星間空間が粒子環境から見て静穏な時期における、HeからFeまでの核成分について3〜250MeV/nのエネルギー領域に対して解析を行った。太陽活動が極大期を過ぎたばかりの1992年後期には、宇宙線異常成分の酵素、窒素、ネオンの強度が既に急激に増加しており、太陽極小期の強度レベルまでに回復している事が明らかとなった。従来観測されてきた宇宙線異常成分の強度変化は、高エネルギーの銀河宇宙線(地上の中性子強度等)のそれと極めて良い相関を示してきた。しかし、この度の太陽周期においては、両者の変動に大きな差が認められた。何故そのように大きく異なるのかは未だ明らかでない。 1AU軌道において、高い第一電離ポテンシャルFIPを有する酵素、窒素、ネオンが宇宙線異常成分として観測されているが、GEOTAIL衛星では強度の少ない炭素、アルゴンについての観測にも成功を納めている。更に、これまで検出されてなかった中程度のFIPを持つ硫黄成分が世界で初めて検出できた。これらの宇宙線異常成分の元素成分の観測結果は、Fisk等(1974)によって提唱されたシナリオに良く一致する。これらの結果から、高FIP(N,O,Ne,Ar)の元素は大部分が中性元素として局所星間媒質中に存在しているが、一方、低FIP(C,S)元素は殆どが電離していてほんのわずかな割合だけ中性元素として存在している事が明らかになった。
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