この研究計画を進めていく中で、ニュートリノ・フレーバー混合を現実的なものと考え、この構造の解析に正面から取り組む必要性が生じた。従って、最終年度の研究計画は主に新しいテーマ、「レプトン・フレーバー混合の構造の解析」にあてられた。神岡地下実験を始めとする諸実験による太陽・大気ニュートリノ観測において、ますます確からしいものとなっている異常を真正面から受け取り、加速器・原子炉実験が与える制限の下で、レプトン・フレーバー混合の構造パターンに関する知見を得ることが緊急の課題である。さらに、COBE(米国の宇宙背景輻射探査機)などの近年の宇宙観測の進歩によって、構造形成宇宙論に関する大きな進展があった。この中で成功を収めている模型の一つは、冷熱二成分ダ-クマタ-に基づく構造形成論である。(この模型は不自然なラムダ項の導入を避けられるという利点がある。)この熱いダ-クマタ-の最有力候補が2-20eVの質量を持ったニュートリノである。そこで、ニュートリノ質量に関する太陽・大気ニュートリノ異常、熱いダ-クマタ-の三つの手掛かりに基づいて、ニュートリノ・フレーバー混合の構造を現象論的に決定するための研究を行なった。具体的には、次のようなテーマについての研究を行なった。 1.加速器・原子炉実験及び太陽、大気ニュートリノ実験の総合的分析 2.大気ニュートリノ観測結果の統計的分析 3.非階層的なニュートリノ質量の仮説の下での三世代解析 4.関連した全ての実験を説明できる可能性の探求 5.縮退した三世代ニュートリノ 6.長基線ニュートリノ振動実験とダ-クマタ-・ニュートリノ これらの諸テーマの詳細については、研究成果報告書に詳述したので、これを参照されたい。
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