研究概要 |
本研究では標準模型における高次補正の計算を自動的に行うシステムを開発することを目標としている。平成5-7年度の研究期間に以下のような成果が得られた。 1)一般的な質量や外線運動量に対する1ループ数値積分ライブラリを開発した。これにより4点関数までの計算が可能となった。更に5点・6点への拡張を試みた。また、質量殻上で繰り込むスキームに基づき繰り込み相殺項のライブラリを作成した。 2)前項のライブラリを利用して2体→2体反応についての1-ループ振幅の自動計算を試みた。具体的にはe+e-→HZ、tt,γγ→ttなどの過程の計算を行った。従来の方法により得られた方法の結果や、ダイアグラムごとに手で組んだ振幅と比較し自動計算の正しさを検証した。 3)振幅がγ_5を含む場合、計算結果にあいまいさが生じることがある。アノマリーを含まない場合には、行列のトレースをとる際、振幅内の特定の要素の位置を固定して計算すれば問題は生じない。このような条件を課して振幅の自動生成を行い、e+e-→W+W-過程で実際に、この手法が有効なことを確認した。 4)2ループ積分では任意の質量や外線の運動量に対して求めることができるような手法をスカラー積分に対して開発し、2点関数および3点関数(梯子型および交差型)について計算が可能となった。 05)2ツ-プ自動計算システムの全体の枠組みを作るための例として、μ粒子の異常磁気能率の2ループ電弱補正の計算を行った。QED的なダイグラム群についてはすべて計算が完了し、今までの結果と一致している。それ以外のダイアグラムについても計算が進行しており、近く最終的な結果が得られる見通しがついている。
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