本研究の目的:半導体微細構造のサイズとそこからの可視ルミネッセンス・スペクトルの相関を計測し、その解析から半導体微細構造の発光機構を明らかにすることであった。微細表面構造を有する半導体試料としてポーラスシリコンとゲルマニウム微粒子を計画した。発光計測は光子エネルギー1.5eVから2.7eVの範囲について行った。 研究結果:強いフォトルミネッセンスが観測される条件で作製されたポーラスシリコンでは表面抵抗が非常に高くなる。このため、このような試料ではトンネル電流が流ず、STMで表面構造を観察することができなかった。かなりの研究時間をかけて種々の作製条件を試み、安定したSTM表面像が得られ、しかもフォトルミネッセンスが観測されるポーラスシリコンを得ることに成功した。このような試料について、STMで表面構造を計測後、STMルミネッセンス実験を行った。ルミネッセンス自体は非常に弱く、発光スペクトル計測のためには長い露光時間が必要であった。そのため、個々の表面構造からの発光を観測するには至らなかったが、平均的に小さなサイズの表面微細構造集合をもつポーラス表面からのSTMルミネッセンスは、より大きなサイズのポーラス表面からのそれに比較して、短波長側での発光がより強くなることが分かった。これはSTMルミネッセンスが量子閉じこめにより発生していることを強く示唆する。ゲルマニウム微粒子からの発光は超高真空対応の蒸着源を試作・組立を行った。本年度は専らポーラスシリコンを試料とした実験を行ったので、ゲルマニウム微粒子の実験は遅れているが、実験装置は完成しているので順次研究を行ってゆく。
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