水素結合型誘電体の相転移に特有な現象である同位元素効果の起源を構造物性の立場から解明することを目的としてK_3D(SO_4)_2の低温相の構造を調べた。基存の装置である対陰極型のX線発生装置に今回購入したMo溶着型X線ターゲットを取り付け、高精度二軸回折計とイメージングプレートを利用して10Kで振動写真とワイセンベルグ写真を撮った。このワイセンベルグ写真上の散乱強度データーは計算機に直接読み取られているので、これを逆格子上での強度分布に変換するプログラムを作成した。このプログラムは非常に有効で、低温で新しく出現するブラッグ反射が一目で分かるようになった。 結果として、K_3D(SO_4)_2の低温相では(0 1/2 1/2)と(0 1/2 -1/2)という二つのV点に新しい反射が出現することが分かった。また、消滅則で消えていた格子点のZ点にも新しい反射が出現していることが分かった。この事実は、以前の結果と違っているが、今回はMoの波長を使用したので非常に広い範囲のブラッグ反射が写っており、新しいソフトウェアでの表示の威力もあって疑いの余地もない結果である。この結果、この物質の低温相では、二つのV点の同時凍結が起こっていると結論付けることが出来た。結果は、国際結晶学会で発表した。また、論文として現在印刷中である。 現在、低温相での構造解析を実行しており、結果が出しだい、H塩の構造解析の結果と比較することにより相転移の微視的な機構が明らかになるはずである。
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