本研究では、大きく分けて4種類の仕事を行った。 1.KDPの動的な性質を見るために中性子散乱の実験を行った。 今回のKDPの中性子非干渉性散乱の実験結果を踏まえてフォノンとトンネル運動が統計的にカップルするモデルが提唱されている。この種のモデルのさらなる検証のためにはこれから多くの実験が必要となるであろう。KDPに関してはその水素原子周りの電子数をX線回折により直接求める実験を実行中であるがまだ再現性のあるデーターを得られていないので今後の課題として残っている。 2.K_3H(SO_4)_2及びその類似物質である(NH_4)_3H(SO_4)_2の構造を決定し多くの成果が上がった。現在論文にまとめている最中である。 3.新物質の探索を行った。水素結合が構造グラスの源となるNH_4I-KIの系と幾何学的効果が存在しないと期待できる分子内水素結合をもつd-BrHPLNの実験である。特に、分子内水素結合系は幾何学的効果の研究に対する決定打になる可能性があり今後も発展させるべきテーマと思われる。 4.低温相での構造実験を行うための装置開発も種々行い、ここで上げた実験には不可欠の装置と技術となっている。 本科研費での成果として、この2年で初期の目的を直接的に達成したとは言い難いが、予定外の成果が既に多く得られており、また、今後の問題として残したことも見通しは立っているので、十分目的を果たしたと思われる。
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