研究概要 |
1.ジャイロトロンESR測定系の整備とESR信号の検出 計画案に基づき,二つの超伝導磁石(6.5T,8T)を用い,マイクロ波直接検波方式(透過型)の広領域ミリ波ジャイロトロンESR測定装置を試作し,これを用いてESR測定を試みた。とりあえず,試料としてDPPHを用いて,90〜135GHzに渡ってESR信号を検出した。この結果は,ジャイロトロンESR測定装置によるESR測定としては,最初の試みであり,ジャイロトロンの今後のこの方面での応用に道を開くものとして注目されている。 2.ジャイロトロン出力の高周波化 ESR測定周波数の高周波化を目指し,新たに試作したサブミリ波ジャイロトロン管と12T超伝導磁石を用いて,ジャイロトロン発振周波数の高周波化の実験を行った。現在までに,サイクロトロン基本波と2次高調波を併用することにより,周波数領域160〜630GHzを覆うジャイロトロンを実現した。なお,この630GHzの値は,現在,ジャイロトロンによるものとしては,世界最高周波数である。 3.ジャイロトロン出力の振幅安定性および振幅変調 ESRに用いる光源としては,振幅変動ノイズが少なく,かつ,振幅変調がされている発振源が計測の点から有利である。そこで,ジャイロトロンの光源としてのクォリティを調べるため,第一アノード電圧を変化させることによって,その直流電圧特性と交流電圧特性(振幅変調特性)を測定した。前者の実験から,振幅変動ノイズの最も少ないアノード電圧の存在が分かり,後者から周波数5〜600kHz変調度0〜100%の振幅変調を任意に変化させることができた。
|