研究概要 |
1.ジャイロトロンESR測定系の整備 計画案に基づき,二つの超伝導磁石(6.5T,8T)を用い,反射型ファブリー・ペロ-共振器ESR分光器,無共振ミリ波伝送導波管透過型ESR分光器およびそのホモダイン型の広領域ミリ波ジャイロトロンESR分光装置を試作し,これを用いてESR測定を試みた。試行したESR周波数は,,ジャイロトロンの基本波発振と二次高調波発振動作により,65〜195GHzで,スペクトル幅10MHz以下であった。そのうち,65〜135GHzに渡ってDPPH ESR信号を検出した。この結果は,ジャイロトロンESR測定装置によるESR測定としては,最初の試みであり,また,ジャイロトロンの特徴である広帯域発振特性を生かしたESR測定である。今後のこの方面でのジャイロトロンの応用に道を開くものとして注目されている。 広帯域ミリ波DPPH ESR測定 上記の測定装置を用いて,単結晶DPPHと多結晶粉末DPPHの広帯域ミリ波ESR測定を行った。両者のESR線幅の周波数依存より,単結晶ではexchange narrowingによる周波数依存しない線幅が,多結晶では,g-因子の異方性による周波数に比例して増加する線幅が測定された。この結果は従来の理論で説明できるが,この周波数帯域での連続的な測定である。 ジャイロトロン出力の安定化および高周波化 ジャイロトロンの発振振幅の時間変動性の実験を行い,最小2%の変動度を得た。 また,ESR測定周波数の高周波化を目指し,新たに試作したサブミリ波ジャイロトロン管と17T超伝導磁石を用いて,発振周波数の高周波化の実験を行い,最高周波数840GHzの発振を実現した。 この値は,ジャイロトロンによるものとしては,現在の世界最高周波数である。
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