研究概要 |
平成6年5月に,極低温装置と高周波電気伝導測定系を組み合わせた最初の実験を行った.その後,数回の測定実験を行い以下の結果を得た.極低温装置としては^3He極低温システムを用いて,温度0.4K〜1.5K,周波数100kHz〜10MHzの範囲で,基底ランダウ準位および量子数N=1のランダウ準位の電気伝導率σxxの,温度依存性および周波数依存性を電子濃度の関数として測定した. 基底ランダウ準位については,ランダウ準位の境界のσxxが極小を示すギャップ領域では,可変領域型ホッピング伝導と考えられる温度依存性が観測された.また,周波数依存性については,バルク半導体のホッピング伝導で観測されているスケール則が,強磁場中の二次元電子系でも成り立つことが見いだされた.これは新しい知見である. また,ランダウ量子数N=1のランダウ準位のσxxのギャップ領域でも,可変領域型ホッピング伝導と考えられる温度依存性が観測され,基底ランダウ準位と同様に周波数依存性におけるスケール則が見いだされた.一方,σxxのピーク領域では,測定電場が40V/mのときには周波数依存性はほとんど見られなかったのに対して,測定電場が10V/mのときにはピーク領域にも周波数依存性が観測された.これは,40V/mのときにはフェルミ面近傍の電子のほとんどが非局在状態であり,ピーク付近の伝導が金属的であるのに対して,10V/mのときには電場の減少に伴い非局在状態のエネルギー幅が減少し,フェルミ面近傍に局在状態が加わり,この局在状態間のホッピング伝導が寄与するようになったと考えられる.このことは,これまでのピーク領域における伝導機構の考え方に修正を求めるもので,これも新しい知見である.
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