研究概要 |
本年度の主な成果としては現実表面の一つである吸着表面をとりあげ,アルカリ金属吸着シリコン(100)表面の昇温脱離スペクトルの解析をモンテカルロシミュレーションを用いて行った。ナトリウム及びカリウムについては実験があり,吸着系の5種類の被覆度について全エネルギーの非経験的な計算がなされている。吸着系に対して格子ガス模型を仮定し,表面結晶学的に非等価な2種類の吸着子間の最近接相互作用を仮定して,相互作用定数を定めた。大正準集合を仮定し,モンテカルロシミュレーションにより,温度及びアルカリ金属吸着子の被覆度の関数として化学ポテンシャルを定め,それを用いて昇温脱離の速度式を得た。この速度式を数値的に積分して,昇温脱離スペクトルを求め実験と比較した。カリウムの場合このようにしてだいたいの実験結果を説明できたが,スペクトルの高温部分で必ずしも一致は良くなく,この原因は最近接相互作用の仮定にあるものと思われる。事実第二近接相互作用を導入すれば一致はやや改善される。ナトリウムに対しても事情は同様で,一致はもっと良くない。このことはシリコン(100)表面でアルカリ金属吸着子の相互作用についてはやはり短距離力のみでは良くないのでないかという示唆を与えるものである。
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