研究概要 |
BEDT-TTF系有機導体の結晶成長と低温物性に関する研究を行った。結晶成長に関しては、 1.成長メカニズムの探索を(BEDT-TTF)_2I_3に対して行った。この中で、CT錯体の各種溶媒中での安定性、可視・紫外光吸収係数、モノクロロベンゼンに対する溶解度、αおよびβ多形の熱力学的安定性等の物理化学的基礎データを得ると同時に、電解酸化法による結晶成長のその場観察、さらにアニオン濃度分布の時間変化の測定を行った。これらの研究により、成長セル内におけるCT錯体の形成される場所が、時間とともに移動している可能性が示唆された。 2.育成条件と育成された結晶の対応に関しては、主に電解電流値とドナー:アクセプタ比を変化させ、(BEDT-TTF)2I3の育成された結晶との対応を調べた。結果として、10mA,D:A=1:6の条件で6.5×1.1×0.7mm3という比較的大型の単結晶の育成に成功した。 一方、低温動物に関しては、 3.α-(BEDT-TTF)_2I_3の熱伝導率の測定において、金属-絶縁体転移に対応する熱伝導率の変化が観測された。金属領域ではWiedemann-Franz則に従うことにより、この転移はチャージキャリアの減少によることが確認された。 4.κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2の超伝導状態を超音波で観測することに成功し、音速変化と磁束状態との関係を論じた。 5.α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4の超音波測定を行い、低温での異常状態を音波によって初めて捉えることに成功し、この異常状態がチャージキャリアの減少と関係することを明らかにした。
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