希土類化合物の一種CeAsは低温で反強磁性を示すが、強磁場を印加すると14〜15Tで強磁性相に転移する。しかし、この物質の磁化過程は報告者によってかなりの違いが見られ、試料の化学量論比からのズレ、特に砒素の抜けている点を我々は指摘した。そこで、まず、厳密に1:1の組成で結晶を作ることを試み成功した。そして、試料依存性のない再現性の良い磁化過程を得ることに成功した。 一方、同化合物のPrSbおよびTmSbは一重項が基底状態の物質として興味が持たれている。これらにおいては磁化は磁場の印加によってもたらされている基底状態の分極によってもたらされる。今回は既に研究したPrSbに加えてのTmSb単結晶を作成し、4.2Kでパルス磁場によって50Tまで磁化過程を測定した。そして、[100]方向に磁場をかけたとき10Tで飽和傾向を示した磁化が30T以上再び大きく増加し始めることを見いだした。これは結晶場理論でよく再現出来ることが分かった。一方、この物質のフェルミ面はこれまで良く知られていなかったので、東北大科研・後藤輝孝氏の音響ド・ハース効果測定装置によって詳細に調べた。その結果、フェルミ面の形はLaSbに良く似ていること、しかし大きなスピン分裂を示すことが明らかになった。25Tに至る実験はハイブリッド・マグネットを用いて行った。そして、外部磁場の逆数に対する振動振幅のフーリエ変換からはフェルミ面の断面積が著しく大きな磁場依存性を示すように見えた。真の断面積の磁場依存性は反磁場を考えて、内部磁場の逆数に対する振動振幅のフーリエ変換より導かれ、α、βとγの各フェルミ面は20Tで低磁場の時に比べ数%ほど増減することが明らかになった。
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