典型的な局在電子系、弱い遍歴電子系とみなせるスピングラス物質を選び磁性電子の遍歴性とスピングラスとしての性質の関連を調べている。局在電子系物質の代表としてホイスラー型合金Cu_2(Mn_<1-X>Ti_x)Alの中性子弾性散乱実験、非弾性散乱実験を行なった。強磁性相、リエントラントスピングラス相における有限距離の相関を持つ成分(クラスター)の散乱関数は以前測定した遍歴電子系物質F_<65>(Ni-Mn)_<35>と同じくローレンツ関数とローレンツ2乗関数との和として表されるがその相対強度や温度変化に大きな差異の有ることが分かった。非弾性散乱実験で観測した磁気励起スペクトルには強磁性相、リエントラントスピングラス相とも明瞭なスピン波励起がなく非常に減衰の激しい励起のみが存在することが分かった。遍歴電子系スピングラスにおいては両相ともにあまり差のない明瞭なスピン波励起が存在することと比べて著しい差異が有ることが示された。現在、冷中性子を用いた高分解能分光器を用いた実験によって、更に広い波数領域での非弾性散乱スペクトルを調べている。遍歴電子系に属する試料として予定していたMn-Si-CoSi系の単結晶試料は作成が困難なためNi-Mn合金の単結晶試料の作成を試みこれに成功した。Ni-Mn合金系の中性子散乱実験の一部は日米科学協力事業の一環として米国ブルックヘブン国立研究所に出張して行なった。同じ系の多結晶試料について外国のグループによって報告されている磁気励起の異常な温度変化がこの試料についても確認された。詳細な実験は現在継続中である。
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