強磁性超微粒子(粒径〜50A)では、磁気異方性エネルギーがkTに比べて十分小さいために、粒子の磁気モーメントは熱によって揺らいでいる。この研究の最終目的は、このような系(超常磁性系)の動的な振舞いを解明することにある。今年度は、当初の計画に従って、シリケートガラス中にマグネタイト・クラスターをきわめて希薄に析出させ、そのクラスターの磁気共鳴を調べて、いくつかの顕著な成果を得た。 成果1:「きわめて一様な粒径と、乱れの無い構造をもつマグネタイト・クラスターをシリケートガラス中に析出させることに成功」。これによって、きわめて、シャープな成果を得ることができた。たとえば、 成果2:「粒径〜50Aの超微粒子でもバルクとほぼ同様の相転移を示すことを検証」。バルクのマグネタイトは〜120°Kでフェルベイ転移を示すことが知られている。このフェルベイ転移は粒子サイズを小さくしていくと〜1000Aで転移が見えなくなるとされていた。しかし、ガラス中のクラスターでこの転移がはっきり確認された。 成果3:「超常磁性共鳴の観測し、それを記述する理論の展開」。超微粒子の磁気モーメントの動的な振舞いを解明することは、未だ解明されていないランダム磁性体のスピンダイナミクスを解く鍵になると考えている。われわれは、超微粒子系の磁気共鳴において、ランダム系にみられるものと同じ振舞いを見いだし、それを説明するモデルを与えることができた。
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