本研究では、1次元、2次元の電子系における電子相関の効果を理論的に調べ、さらに乱れによる効果もとりいれることによって低次元電子系(メゾスコピック系、量子ホール効果、高温超伝導など)での実験事実の説明を試みることを目的としている。特に、厳密解の方法や共形場の理論などを駆使して低次元電子系の理論的な解折を行う。本年度の研究成果を以下にまとめる。 1.まず電子間の相互作用にまつわる基礎的な問題として、1/r^2型の長距離型相互作用を持つ1次元電子系の系統的な研究をおこなった。このタイプの相互作用は、物性物理の様々な現象に現れることが知られている。まず、この模型が量子ホール効果のエッジ状態の本質を記述できる模型であることを示した。また、この模型を量子細線で観測されている伝導度振動の模型として用い、伝導度振動に2つの独立な周期が現れうることを示した。 2.メソスコピックな量子細線で観測されている永久電流に関する研究を行った。特に、厳密に解ける模型を利用して、電子間相互作用とスピン軌道相互作用が永久電流に及ぼす効果を調べた。不純物や乱雑性の効果を取り入れることが6年度以降の課題として残っている。 3.量子細線におけるコンダクタンス揺らぎに関しては、乱れの効果を理論に取り込むことができた。その結果、乱れによる電子状態の局在が進んだ場合、コンダクタンスの揺らぎは共鳴トンネル効果によって説明されることを示した。
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