研究概要 |
現有の高圧セルと小型冷凍器を組み合わせたシステムで、PrCo_2Si_2単結晶を用いて、温度10K以上で、圧力〜20kbarまでのいくつかの圧力で中性子回折の測定を行なった。その結果、磁気転移点は圧力とともにわずかに上昇すること、磁気変調ベクトルはこの圧力では変化しないことなどが分かった。この結果は1993年秋の物理学会において「PrCo_2Si_2の高圧下中性子回折(I)」のタイトルのもとに発表された。 また、希土類金属Erなどの磁気構造の圧力効果を中性子回折により調べた。Erについては、11.5kbarでは常圧でみられる低温でのコーン構造が消え、サイクロイド構造が低温まで存在していた。このサイクロイドではc軸振動成分に7次までの奇数高次成分があり、Q=2/7(2π/c)の整合構造であった。これらの結果は、J.Phys.:Condens.Matter5(1993)1535-1546に公表されている。また、Tb,Hoなど磁気構造の高圧中性子回折の結果と併せて、原研主催の第5回核エネルギー先端開発に関する国際シンポジウムで発表され、JAERI-M 93-228 Vol.2,pp.492-499に公表された。さらに、高圧セルの特性、これまでの使用経験、将来の改良の計画などが、京大原子炉実験所学術講演会でまとめて発表され、同講演会報文集 28(1994)217-227に公表された。 これと同時に、大熱容量の高圧セルを10K以下まで効率的に冷却可能な液体ヘリウムクライオスタットを設計、製作した。このクライオスタットはLHeの主タンクとサブタンクを持ち、このサブタンク中のLHeをpumpingすることにより試料温度を4.2K以下に冷却することを目指している。これにより、高圧下中性子回折による磁性研究がさらに発展すると期待される。
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