研究概要 |
現有の高圧セルと小型冷凍器を組み合わせたシステムで、PrCo_2Si_2単結晶を用いて、温度10K以上、圧力22.5kbarまでの範囲で(P,T,)磁気状態図を完成した。この化合物では低温から三つの磁気転移点T_1'T_2'T_Nをもつが、圧力効果はT_1は殆ど示さず、T_Nが正の大きな圧力効果を示した。新しい磁気相や磁気変調ベクトル変化は認められなかった。以上の結果は、1994年10月の中性子散乱国際会議(仙台市)において"Magnetic structure of PrCo_2Si_2 under high pressure"のタイトルのもとに発表され、Physica Bにて印刷中である。次に、NdCo_2Si_2に同様な実験を行なった。予備的な解析結果では、三つの磁気転移点の圧力による増加が、PrCo_2Si_2に比べて格段に大きいことが分かった。現在、結果を取りまとめ中である。 また、希土類金属ErのP=14kbarにおける磁気構造について詳しく温度依存性を調べた。この圧力では、低温ではコーンではなく、サイクロイドであった。このサイクロイドはT_<cy>=46Kで縦型正弦波構造に変わり、T_N=82Kで常磁性となる。磁気転移点の圧力効果は負である。低温でのサイクロイドは、Q=2/7(2π/c)で先に報告したP=11.5kbarの時(J.Phys.:Condens.Matter 5(1993)1535-1546)とかわらないが、変調ベクトルの温度依存性を詳しく測定した。結果は、1994年8月の磁気国際会議(Warsaw,Poland)で"High pressure neutron diffraction studies of the magnetic structures of erbium"のタイトルのもとに発表され、現在J.Magn.Magn.Mater.vol.140-144(1995)に印刷中である。 さらに、大熱容量の高圧セルを10K以下まで効率よく冷却可能な液体ヘリウムクライオスタットを完成させた。このクライオスタットは、液体ヘリウムの主タンクとサブタンクをもち、サブタンクに高圧セルをぶら下げ、主タンクからニードル弁を通じてサブタンクへ液体ヘリウムを送る構造となっている。サブタンク内の液体ヘリウムをポンピングすることにより、〜2Kまで冷却することを目指している。これにより、高圧下中性子回折による磁性研究がさらに発展すると期待される。
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