研究概要 |
従来より、我々は量子流体の素励起の動的性質を明らかにする上で、ラマン散乱が非常に有力な実験手段であることを示してきた。最近は、量子固体中の素励起の動的性質を明らかにする目的で、固体ヘリウムについて測定してきている。hcp構造の固体ヘリウム4のラマン散乱実験より得られた知見を以下に示す。測定は試料温度0.71K、1.1cm^<-1>の高分解能で行った。ラマン散乱スペクトルには、1フォノン散乱によるピークが7.39cm^<-1>に観測された以外に、従来の報告では分解能及び温度による困難から1つのブロードなスペクトルとして考えられていたスペクトルが4つのピーク(17.1,20.9,25.2,と約30cm^<-1>)でできていることが得られた。これら4つピークのエネルギーは、理論から計算されたブリルアンゾーン境界のフォノンの2倍のエネルギーと良く対応することから、これらピークは2つフォノンを同時に生成する2フォノン散乱であると結論した。これら以外に、ラマン散乱スペクトルには、高いエネルギー領域に、エネルギーの増加とともに強度が減少するスペクトルの存在も実験的に明らかになった。これらの知見は、Physical Review B誌において公表されている。 総合科学部が平成5年3月に移転して以降、実験装置の主要部であるクライオスタットや周辺機器の整備に集中してきており、ようやく完了した。そして、総合科学部と低温センター間のヘリウム回収配管が平成6年3月末に完成するので、これから精力的に量子固体ヘリウム3の実験を行い、格子振動の力の定数、フォノンの分散関係、ゼロ点振動による単一粒子的運動の動的性質を明らかにしていく。
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