1.試料としては、超伝導特性の不均質性に基づく磁束ピン止めが小さく、かつ、容易に薄い膜ができる粒状アルミ薄膜を選んだ。この薄膜は酸素ガス雰囲気中の蒸着によって作製した。 2.外部磁場勾配は、粒状アルミ薄膜試料の両側に並べた銅薄膜、またはニオブ薄膜に電流を流すことによって加えられた。銅薄膜の場合は、この薄膜に発生したジュール熱が基板を通して試料に伝わるため、試料温度を一定に保つことが困難だった。そのため、銅薄膜の代わりにジュール熱が発生しない超伝導のニオブ薄膜を用いた。ニオブ薄膜をスパッター装置で作製した。 3.外部磁場勾配を与える銅薄膜やニオブ薄膜、および測定対象の粒状アルミ薄膜は、リソグラフィ技術を使って微細加工した。粒状アルミ薄膜の試料幅は、当初の計画だと数種類作製するつもりであった。しかし、微細加工の条件を出すのに予定していたより、時間がかかった。実際作製したのは、約1mmの1種類だけである。 4.磁場の空間積分の平均値が発散しないよう導入したパラメータλ_0は、物理的意味が不明確である。λ_0の大きさを求めるため、反平行量子磁束の定常流れに基づく電圧の、ニオブ薄膜に流す電流に対する依存性の計算結果を測定結果に合わせた。しかし、測定結果は臨海温度付近を除いて非線形であり、そのため、線形の関係しか取り扱っていない計算結果との単純な比較は問題があり、測定温度範囲と測定輸送電流範囲ではλ_0は数10μmだった。また、以上の方法で求められたλ_0は輸送電流依存性があるが、この結果は前述の非線形の問題と関係あるかも知れない。非線形性を取り入れた計算の出現が待たれる。
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