Ceを中心とした高濃度近藤系物質においては、Ceが規則正しく並んでおり、近藤格子を形成している。この周期性のため、電気抵抗率rho(T)は低温で著しく減少しフェルミ流体特有のT^2依存を示す。最近この系の物性はCe原子の不規則性に強く依存することが報告されており、圧力に対して非常に敏感であることも明らかにされている。本研究は、非晶質系近藤格子系を含んだ広い物質に対して常圧及び高圧下で系統的研究をし、高濃度近藤効果の起源解明に新しい情報を得ることを目的とする このため、試料内に不規則性があるCeInCu_2と非晶質CeCu_6及びCe_<58>Ru_<42>を使い熱膨張、電気抵抗その他の実験を行った。以下に主な結果を述べる。 (1)CeInCu_2の高圧下の熱膨張係数測定 CeInCu_2の熱膨張係数alphaを20kbarまで測定し、フェルミ面における状態密度N(O)が、加圧と共に減少していくことを明らかにした。このことは、高圧下で近藤温度T_kが上昇していくことで説明ができる。 (2)非晶質CeCu_6の電気抵抗の圧力効果 非晶質CeCu_6の電気抵抗rho(T)を、20kbarまでの圧力下で測定した。T<10Kで、logTに依存する電気抵抗が観測された。その定量的解析から、coupling constant J とN(O)の積JN(O)の絶対値は、圧力と共に増加することがわかった。これは、結晶質CeCu_6と定性的に同じであったが、その増加率d〓JN(O)〓/dpは、非晶質CeCu_6の方が1桁以上も大きく、ここに顕著な不規則性の効果がみられた。 (3)非晶質Ce_<58>Ru_<42>の高圧下における電気抵抗 この物質rho(T)curveを22kbarまでの圧力範囲で調べた。抵抗極大の温度T_<max>の圧力変化は、加圧と共に下っていくという結晶質物質とは逆の振舞を示した。このことは、Ceの不規則性がT_<max>の圧変化に大きく影響していることを示している。低温におけるT^2依存は、誤差が大きく定量的議論はできなかった。 非晶質CeCu_6の高圧下の磁気抵抗効果 磁気抵抗効果は、系の電子状態を敏感に反映するので、高圧下の測定を20kbarまでの圧力範囲で行った。結果として、磁気抵抗効果は、20kbarまで負のままであった。このことは、低温で正になるというCeCu_6の結果と逆であり、非晶質CeCu_6に対しては、希薄系近藤効果の理論が適用できることを示している。
|