溶液中の枝分かれ高分子のスケーリング理論

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05640434
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 大野 かおる 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (40185343)
• キーワード: 枝分かれ高分子 / スケーリング理論 / 星型高分子 / モンテカルロ・シミュレーション / ミセル / ABブロック・コポリマー / ラウス模型

研究概要

枝分かれ高分子は一本の高分子鎖に比べて高い膨潤性、吸水性を示すことが理論的に予想されることや界面活性剤・ミセル等との関連から、高分子先端材料としてその実用性、応用性が広いものと期待される。星型高分子のモンテカルロ・シミュレーションに関しては、腕の数6本までの解析が報告されていたが、32本という多数の腕を持つ星型高分子をモンテカルロ法で扱ったのは我々が初めてである。本年度行った独国マインツ大学のクルト・ビンダー教授と私との共同研究によると、このエントロピー情報は、長さの長い親水性Aブロックと長さの短い疎水性BブロックからなるABブロック・コポリマー水溶液のミセル形成濃度を調べる際の重要なファクタとなる。そこで、臨界ミセル濃度およびミセル当たりの平均枝分かれ度の振る舞いを調べた。この中間結果は、総合研究A(大阪大学寺本先生代表)研究会で報告し、3月末の日本物理学会でも報告予定である。系のエントロピーに関する情報まで信頼性の高いデータを得るためにはモンテカルロ法が有効である。特に、準静的な流れ場中でのシェアを記述するためにクラマース・ポテンシャル中での空間分布を計算した。これにより、ラウス模型の範囲内で、シェアに対する比較的速い緩和時間を見積もることが出来る。また、同時に、星型高分子に対して非球形度などの計算も新たに行い、繰り込み群による予想との極めて良い一致を得た。本研究で考察するスケーリング理論は、溶液中の任意の形状の高分子ネットワークの平均的な空間分布や緩和時間などの(各鎖が長い極限での)漸近的性質を基本的な星型高分子の漸近的性質を既知として予言する画期的なものであるが、全配置数に関するスケーリング理論は既に完成している。

研究成果

• [文献書誌] Motoi Kudoh: "New cluster-cluster aggregation model for formation process of fractal structure in sol-gel transition of SiO_2" Journal of Crystal Growth. 128. 1162-1165 (1993)
• [文献書誌] Motoi Kudoh: "Dynamics Simulation of New Cluster-Cluster Aggregation Model for the Sol-Gel Transition of SiO_2 Glass" “Computer Aided Innovation of New Materials"(M.Doyama他編、Elsevier Science Publishers,Amsterdam). II. 319-321 (1993)
• [文献書誌] Kaoru Ohno: "Monte Carlo Simulation of Many-Arm Star Polymers in Three-Dimensional Good Solvents" “Computer Aided Innovation of New Materials"(M.Doyama他編、Elsevier Science Publishers,Amsterdam). II. 315-318 (1993)
• [文献書誌] Kaoru Ohno: "Monte Carlo Simulation of Many-Arm Star Polymers on Massively-Parallel Computer" “Proceedings:International Conference on Computer-Assisted Materials Design and Process Simulation"(The Iron and Steel Inst.of Japan,Tokyo). 480-485 (1993)
• [文献書誌] Kaoru Ohno: "Monte Carlo Simulation of Many-Arm Star Polymers" “Macromolecular Chemistry and Physics,Macromolecular Symposia"(Huthing & Wepf,Basel). (印刷中). (1994)