本年度は非平衡条件下にある反応拡散系を分子的レベルで計算機シミュレーションするためのコードを開発した。拡散は分子間の衝突によって起こるので、分子を剛体球とみなし、衝突したときに、化学種を変換する。その確率が反応速度に対応するものとする。開放系を模擬するために、反応定数が定常状態で詳細釣合を破るように設定する。 予備的結果として、反応定数が詳細釣合を破る場合、剛体球系で予想される濃度相関の他に、長距離の空間相関が認められる。これは、流体力学的なランジェヴァン方程式から予想されるものと一致する。ただし、興味ある結果として、相関の特性距離として二つ存在するようである。一つは流体的記述に基づくものから予想され、他方は、衝突による運動量緩和に対応するもので、「運動論的距離」と言うべきものである。 今後、この「運動論的」距離の意味を、ボルツマン方程式の解析から明らかにすることが重要である。
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