研究課題/領域番号 |
05640442
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関本 謙 名古屋大学, 工学部, 助教授 (00179342)
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研究分担者 |
福本 康秀 名古屋大学, 工学部, 助手 (30192727)
桑原 真二 名古屋大学, 工学部, 教授 (30011589)
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キーワード | ゲル / 混合溶媒 / 非平衡 / エネルギー変換 / ソフト・マテリアル / 不安定性 / 拡散 / 中心多様体 |
研究概要 |
化学的に架橋されたゲルが、それをとりまく混合溶媒の組成変化に際して示す時間的空間的応答を調べる。具体的にゲルの実験系(N-isopropyl acrylamide ゲル/水/メタノール系の諸量をもちいた理論モデルにもとづき解析した。自由エネルギー関数には今日広く実験解析に用いられているP.J.Floryによるモデルを他成分溶媒の場合に拡張したものを用いた。非平衡統計熱力学の線形応答の形式を適用した。物理的意味の明確な2つの流束-網目に相対的な混合溶媒の流束・混合溶媒の平均流束に相対的な個別溶媒成分の拡散流束-を新たに導入した。外部溶媒が撹拌される場合と拡散のみの場合い各々にふさわしい境界条件を定式化した。(本科研費で購入したワークステーションの数式処理ソフト及び数値計算機能を本格的に使用した。)溶媒低分子の拡散係数が網目高分子の拡散(浸透)係数にくらべて2桁大きいため、外部溶媒組成の変化に際し先ず溶媒の拡散平衡のみが系の広い空間領域で達成され、方や網目の拡散はゲル表面近傍を除きほとんど起こっていないという多成分溶媒中ゲルに固有の「半平衡状態」が見いだされた。更にその状態が「混ざり易い混合溶媒は網目の介在を嫌う」という機構により、真の平衡下では起こらない熱力学不安定を呈する事を発見した。上記の不安定効果は水・エタノールの非対称性を含めて広津氏(東京工業大)の実験をかなり説明するものと考えている。柔らかい物質の化学エネルギー・力学エネルギー変換機構において、ゲルの「柔らかさ」と変換効率に関する問題提起に対し、上記の知見は化学的過程の初期にはゲルはかえって「硬く」振る舞うという新しい見方を示唆するのではないかと想像し、今後の課題に加えたい。本研究は院生吉村健一君との連名でJournal of Chemical Physicsに1994年2月に投稿した。
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