粒径100〜500μm程度のシリカゲルや陽イオン交換樹脂など共有結合で形成された粒子を化学振動反応系の受容体としてを用いた。これらの粒子に触媒であるフェロインを組み込み、BZ反応溶液に浸したところ、粒子表面に局在した酸化還元波が現われた。この波を顕微光学的に検出することにより、粒子を化学振動子として見なすことができることがわかった。まず、2つの結合振動子の性質を明らかにした。結果をまとめると、次のようになる。(1)粒子間結合は物質拡散に依っており、時間遅れを伴う。その結合強度は粒子間距離によって制御できる。(2)通常の引き込み現象とは異なって、同期振動数は速い振動子の固有振動数より更に大きくなる。(3)結合強度に依存して強結合、弱結合そして無結合の3つの結合状態が存在する。(4)弱結合領域では、振動子の固有振動数の比に応じて、色々な同期振動数比を持つ状態が存在する。特に1:n(nは2より大きい整数)のモードが安定である。(5)安定モードの境界領域でカオス挙動が現われる このような非平衡要素系が、要素間の協力性と外的擾乱との競合によって、如何なる相転移を引き起こすかを調べた。フェロインは、酸化還元反応の可視化に非常に良く利用されてきた触媒であるが、光感受性触媒としても十分利用できることがわかった。この敏感な光応答性に着目して、振動子にレーザー光を一定時間照射した結果、次のようなことがわかった。(1)酸化還元反応リズムにカオス的な乱れを誘起できた。この乱れが実際カオスか否かは今後の課題である。(2)乱れに伴って強結合から無結合への転移が起きる。(3)この現象は振動子の所期位相に強く依存する。
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