研究概要 |
火山体内部に存在するマグマの冷却は,かなりの部分熱水対流によっている.そのような対流系を把握する目的で,自然電位測定を行った.測定は有珠山,北海道駒ヶ岳,三宅島,雌阿寒岳,恵山で行われた.前3つの火山では,空間的波長が1〜2km,振巾が数100mVに及ぶ正の自然電位異常が山頂部に観測された.一般に熱水対流の上昇域では,界面導電効果によって,正の電位異常が期待される.従ってこれらの火山体内部には高温のマグマが比較的浅部に残存し,活発な熱水対流の熱源となっていると推定される.これに対し,後2つの火山では山体規模の顕著な電位異常は認められなかった.両火山は歴史時代に水蒸気爆発を除いて、本質的噴火をしていないが,地表からかなり高温の火山ガスが噴出していることが特徴である.従って,熱源となるマグマはかなり深部に存在しており,その熱はパイプを通じて直接地表にもたらされていて,山体にはあまり活発な熱水対流を惹起していないと考えることが出来る. 一方,自然電位異常を定量的に解釈する上で,現場における流動電位係数を知ることが不可欠である.本研究では,地下水の水理モデルが比較的良く確立されている(流路,流量,透水係数等),アトサヌプリ〜川湯温泉地区で自然電位測定を行い,現場での流動電位係数,特にζ-電位を求めた.値は-20〜0mVとなり,川湯温泉水の低いpH値(〜2)を考えると,他の研究者の実験室の値と整合している.
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