地磁気変化の地球内部項を地球内部の電気伝導度の推定の手段に用いることはよく行われている。しかし一方、地球の表面の約70%を占める海洋の電気伝導度は約4S/mであり、地球浅部の電気伝導度(10^<-2>-10^<-4>S/m)に比べて非常に大きいため、地球外部起源の地磁気変化による電磁誘導によって生じる地球内部電流は海陸分布によって変形され、その度合いは、もとの地磁気変化の周期や空間的な形に依存するが、海洋を流れる渦電流の減衰時定数が10数時間であるので、1日及びその高調波からなる地磁気静穏時日変化(Sq)場や、数日より短い周期の地磁気擾乱場について海洋の効果を考慮に入れることが必要となる。 本研究では以上の状況を考慮して、まず地磁気Sq場や1時間-数日の周期のDst場やDp場と呼ばれる地磁気擾乱場によって海洋中に誘導される電流を球関数展開を用いた全地球的な計算により求め、地球上の各点で海洋の効果を考慮に入れた磁場変動を評価した。その結果、Dst場が海洋-マントル系に誘導する地球内部電流は、Sq場による誘導電流に比べて少ない電流しか海洋中に誘導されないことが分かった。これは海陸分布と外部誘導場の形状との兼ね合いによるものと思われる。これに反してDp場の場合の誘導電流の強さはSq場の場合と同程度であった。さらに、全地球的計算によって求めた電流分布を境界条件にして、局所的な誘導電流を、自己誘導効果をも含めて評価する方法を考案し、日本近傍のより細かな海陸分布をも考慮に入れた電流分布を計算した。海陸分布のみを考慮した場合の標準的な電流分布を求めた。これらの結果を、観測結果と照合することによって、より正確な地球内部の電気伝導度分布を求めることは今後の課題である。
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