最近の地震学トモグラフィーの研究により、島孤域の地殻マントルの密度の不均質性(熱的状態)が明らかになりつつある。特に、トモグラフィーによって推定される上部マントル内での流れと地殻との粘性カップリングを時間を考慮して理論的に考察することは、造山運動・リフティング・縁辺海の拡大などの地学現象の物理的メカニズムの解明につながると考えられる。本研究目的のため行なった当該年度は以下のとうりである。 下部地殻が上部マントルと同程度の粘性率(〜10^<20>〓as)をもち延性的に振舞うときには、定常的な内部過重(マントルプリューム)に対して次のような現象が起こる。初期には下部地殻もリソスフェアの一部として振舞い、表面地形の隆起がおこる。つぎに、上部マントルと下部地殻の密度差のため力学的カップリング(mechanical coupling)が両層間で1Ma後(下部地殻と上部マントルの粘性率による)に起こる。この結果内部過重直上(マントルプリューム直上)の下部地殻物質が周辺域に押し流され、地殻の薄化及び表面の沈降が起こる。この地殻流動は、マントルプリューム直上の地殻物質が、前孤側に移動することを意味し、マントルプリューム存在域での堆積盆の形成、前孤側での高温変成帯の生成と関係がありそうである。現在この観点から、白亜紀に起こった、関門層群の形成、領家変成帯の形成、中央構造線の形成との関係を考察している。これらの一連の出来事は、マントルプリュームを介在した、地殻とマントルのカップリングとして、定量的(時間・空間スケール)に説明できそうである。
|